わが父・溥傑 ラストエンペラーの弟・波乱の生涯
教育テレビETV特集のアンコール放送。90分たっぷりの鬼気迫るドキュメントに、何度も襟を正した。このところ襟を正したり瞠目したり、快哉を叫んだりと気分がハイに傾いているように自省するが、しかしこの番組もまた紛れもない本物だった。
満州国皇帝・宣統帝溥儀、ラストエンペラーの呼び名で知られるこの人物の、一つ違いの弟・愛新覚羅溥傑。番組はその溥傑の次女、今は西宮に住まう福永嫮生(こせい)さんが、父の故郷旧満州を訪ねる軌跡を追って進んでいく。
まず嫮生さんの話す日本語が、まるで昔の松竹映画、それも小津安二郎作品の原節子を思わせて、どこまでもやわらかく心地好い。だが淡々としたその口調が語る内容、訪れる土地にまつわるエピソードは、あまりに過酷で時として言葉を失う。
わずか五才のときの父親との別れ、終戦時の母・浩(ひろ・嵯峨侯爵家の長女)との大陸放浪、姉慧生(えいせい)との再会、その姉の自死(世に言う天城山心中)、16年ぶりの父親との再会、母親の中国永住と自身の日本へ残る選択……。
ロシア軍に抗し、自分への盾となって射殺されていった従者たち。60年ぶりに訪れたその現場で、じっと無言のまま合掌する嫮生さんの姿に、それまで何を大げさなと敬遠していた、“流転の王妃”という浩への冠詞が初めて理解できた気がした。
ところで、この満州族の王統・愛新覚羅家には、もう一人私の興味を引く人物がいる。
本名・愛新覚羅顕玗(けんし)、中国名・金壁輝(べっき)、溥儀の近しい血族にあたる粛親王の娘で、日本名を川島芳子と名乗る女性。そう、あの“東洋のマタハリ”と呼ばれ、歴史の徒花のように咲いて散った“男装の麗人”である。
彼女には、さまざまなスキャンダルが今も囁かれる。最期は国家反逆の罪で銃殺刑に処せられ、刑場の露と消えた女スパイ。その常時携帯していた拳銃が、あの浜口雄幸を狙撃したテロリスト、佐郷屋留雄が使用した拳銃であったという逸話は、歴史の暗部に横たわるどろりとした情念を感じさせ、寒けがするほどである。
もうずいぶん以前のことになるが、伊藤俊也監督・松坂慶子主演で、この川島芳子の一代記を映像化する企画が持ち上がり、彼女の人生を調査したことがある。結局その企画が実ることはなかったが、今でも面白い話になるはずだと、機会があるごとに彼女のテンション高い人生を追い続けている私なのである。。。(^_^X)
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コメント
>伊藤俊也監督・松坂慶子主演で、この川島芳子の一代記を映像化する企画が持ち上がり、
見たいです。松坂慶子さんもっと若い頃だったら・・・
川島芳子さんって添え物的な扱いが多くて、彼女はフィクションなのではないかと思えてしまいます。
そこが謎めいてロマンティックなイメージで想像力をくすぐられるのですが。
でも実在の人として主役として見据えた作品が見てみたいです。
投稿: さんがつ | 2006年2月13日 (月) 17時25分
> さんがつさん
川島芳子という女性は、毀誉褒貶かまびすしいといいますか、悪女の誉れ高い人で、その出自の高貴さと相まって、大変男心をくすぐる存在ですね。
いま演じるとすれば、宝塚の男役出身、天海祐希さんあたりですかねえ。
馬賊の長として、中国の大平原を馬で疾駆する、男装の女隊長。
うう、改めて書いてみたくなってきたぞ。(^○^)
投稿: REと庵 | 2006年2月13日 (月) 20時10分
私も天海祐希さんのお顔を思っていました。
どうしても、今はそうなってしまうのかも知れません。
写真で見るご本人のイメージとは、随分違いますけど。
馬に乗った姿はさぞや美しいことでしょう。
ふ~溜息が出ます。
投稿: さんがつ | 2006年2月14日 (火) 01時40分
> さんがつさん
満州族はもともと騎馬民族ですから、彼女の中には騎馬の民独自のスケールの大きな心が流れていたはずです。
五族協和、王道楽土、耳触りのいいスローガンに翻弄された、やはり時代の犠牲者だったのか、それとも積極的に時代を利用して上昇しようとした、強烈なプライドの持ち主だったのか…??
投稿: REと庵 | 2006年2月14日 (火) 19時42分
ETV特集、わが父ふけつ~ラストエンペラーの弟・波乱の生涯~!この番組をDVD録画された方、譲っていただけませんか?お礼はいたしますので、お願いします
hondazook2006@yahoo.co.jp
まで^^
投稿: yamazaki | 2007年1月22日 (月) 13時56分