« 風の盆に酔うプチオフ | トップページ | 商売繁盛で笹持って来い »

2006年10月10日 (火)

宮大工棟梁の直言

昨日は、箱根の老舗旅館“萬翠楼福住”で、京都の宮大工棟梁安井清さんの講義を受ける。「桂離宮」昭和の大修理や、国宝の茶室「如庵」移築(大磯から犬山へ)、「待庵」の修理などに携わった名工中の名工である。

どういうわけか、その大棟梁が拙宅茶室「と庵」を訪れたのが、ちょうど去年の今ごろのこと。どうしてこんな“なんちゃって茶室”にと恐縮しながらも、さばけた人柄と含蓄ある言葉の数々に魅せられ、たちまち分野違いの弟子入り志願となった。

昨日のテーマは、「日本人と床の間」。「日本人であるということは、床の間のある家に住んでいることである」と、いきなりの直言に胸を衝かれる。

「床の間」の起源は、本来「上段」と呼ばれる貴人を迎えるための一段高い場所であったこと。時に畳を敷いた床の間が散見されるのは、その名残であること。

元々の床の間とは、「書院」の棚のことを指し、貴人を迎えた際にそこに花を活けたのが由来であること。日本家屋のコンセプトは、古来横が女性、縦が男性を表わすものであること。等々、一つ一つの教えに浅学の身の目からうろこが落ちていく。

今回の教室となった“萬翠楼福住”は、関東ローカルで放映されている、小田急ロマンスカーCMの舞台になった老舗旅館で、いくつもの意匠を凝らした内装の数々、明治の職人の魂が、各部屋をめぐりながらの講義で解明されていくのも圧巻だった。

「蛇の目」と呼ばれる台湾産の銘木。二股に生えた珍品の竹の、さらに七つの節目を選んで使用した精神性。竹を割って真ん中の部分だけを残し、互い違いに組み合わせた障子の桟。意識的に一枚板だけを据えた、欄間が問いかける主張……。いずれもが古都京都ですら、滅多にみられなくなった大工仕事の粋であるとのお話。

いやいや、箱根侮りがたし。前回、前々回の教室となった“環翠楼”、“福住楼(萬翠楼とは別の老舗)”ともども、こんな近場に「本物」がどっしりとその存在を誇示していることに、そよとも気付かなかったおのれの不勉強を恥じるのみである。

安井棟梁、今度は京都祇園の話などをゆっくり聞かせていただきたいと思います。

|

« 風の盆に酔うプチオフ | トップページ | 商売繁盛で笹持って来い »

コメント

 福住は新館に一度、泊まったことがあります。誰の紹介だったか、適当な値段の旅館がすべて満員。で、その人に連絡を取ると、福住を紹介してくれた。

 行ってみたら、東南の角部屋、それも3階。  え、え・・と思っていたら、夕食が3メートルほどのテーブルに、だだだと隙間無く並んだ。こちらは4歳、1歳の子供に愚妻と4人。もう、どうしょうと。これはひとり4-5万円は覚悟しないといけないなと、ふたりで財布の中身を勘定。当然、そんなにない。カードも持っていない時代なので、あとはツケだと生きた気がしない。

 しかし、紹介者がなかなかの人だった(まだ思い出せない!)のだろう、ごく当たり前の勘定しか提示されず、神に感謝したことがありんす。

 旧館の方など、考えもしない時代のコワい思い出です。

投稿: なまえっち | 2006年10月10日 (火) 13時49分

> なまえっち大兄
箱根の老舗旅館にとって、部屋にバストイレがついていない、また露天風呂がないというのは、新興勢力に比して重いハンディなのだそうです。
若いお客たちは、バストイレは外で露天風呂もなしという、老舗ゆえの条件に引いてしまうことが多く、その辺りの悩みをどう克服していくのか、また今の機会を逃すと二度と復元出来ないであろう意匠の数々を、どうメンテナンスしていくのかなど、二代目・三代目の若手経営者たちの苦悩は深いと聞きました。

投稿: REと庵 | 2006年10月10日 (火) 19時37分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/112134/12222689

この記事へのトラックバック一覧です: 宮大工棟梁の直言:

« 風の盆に酔うプチオフ | トップページ | 商売繁盛で笹持って来い »