電車最中と留井警部補
『電車最中』は島田荘司さんの最新作、『光る鶴』(光文社文庫)に所収された書き下ろし短編である。主役は『灰の迷宮』に登場した、鹿児島県警捜査一課の留井十兵衛警部補で、おなじみ吉敷竹史警部が脇に回っている。
留井十兵衛という名前は、往年のフランス映画の名脇役、ルイ・ジューベに想を得たと島田さん自身の口から聞いたことがある。
ルイ・ジューベ。『舞踏会の手帖』のベルレーヌを口ずさむキャバレー経営者、『旅路の果て』の自尊心の塊のようなエゴイスト、『犯罪河岸』の人間味あふれる刑事役などが直ちに思い浮かぶ、オールドファンには忘れられない名優だ。
島田さんは、恐らく『犯罪河岸』でのアントワーヌ警部の演技を観て、留井刑事のキャラクターをイメージしたものと推測する。独特の品格をたたえた風貌と、鋭くしかし淡々とした演技が、著者の創造力を刺激したのだろう。
去る一月に、今はなき“月曜ミステリー劇場”でオンエアされた『灰の迷宮』では、その留井刑事を温水洋一さんが演じていた。脱力系で知られる性格俳優、温水さんの芝居がルイ・ジューベのそれとシンクロしたかどうかは分からないが、放映後しばらく経って島田さんは再び留井刑事を活字の上で蘇らせてくれた。
この1作は、「電車最中」というのですが、「灰の迷宮」に出てきた鹿児島の留井警部補の、東京集団就職時の思い出話という側面もあるもので、(中略)自分としてはけっこう気にいっています。留井刑事を思い出したのも、鹿賀・吉敷のドラマの印象があったので、沸いて出たものと思っています。
と、さりげなく原作者からのメールの一節をペーストしたところで(笑)、さて、肝心の『吉敷竹史シリーズ』第3作の映像化はどうなっているのだろう。
ある人は、2Hサスペンスはすでに見限られたと言い、ある人は、視聴率15パーセント超の実績がない以上営業的に難しいと言い、またある人は、いや“窓際太郎”や“浅見光彦”だけが生き残るとは思えない、もう少し待てば必ずクオリティ重視の流れが出てくるから、臥薪嘗胆で想を練っていろと言う。
やるとなれば、第1作『寝台特急はやぶさ・1/60秒の壁』に登場した、牛越三郎警部補が活躍するあのシリーズ作になる予定なのだが、う~ん。( °~ °)
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